
2021年10月17日(日)日本有機農業研究会創立50周年記念映画「みんなの土と空」のオンライン上映+試写が行われました。COVID-19という制限された状況のなかで、25件の取材先にGoproMAXという360度撮影できるカメラを宅急便で送り、そこで撮影された自撮り取材映像だけを使って作品をつくりあげました。以下、そんな話しです。
監督のお声掛けをいただいたのは2019年の初夏で、当時は取材撮影を予定していたものの、年明けからCOVID-19による緊急事態宣言によって県境をまたいだ移動もできない状況となりました。日本有機農業研究会(以下:日有研)の魚住さんから取材は中止の連絡が入ったので、制作も当然延期になるものと思っていましたが「制作は続行する」という話しで、一瞬自分の耳を疑いました。
魚住さんも具体的にその解決手法のイメージがあるわけではなく、どうして取材・撮影ができないのに映画が作れると思ったのか、いま振り返っても不思議です。そこで色々アイディアを考えてみたときに、リドリー・スコットがプロデュースした「Life in a day」のことを思い出しました。世界中から映像投稿を募って一本の映画にするという企画で話題になった映画です。
https://www.youtube.com/user/lifeinaday
そうは言ってもバラバラの撮影手法で撮影された映像を1本の作品にまとめるのは至難です。しかも取材先のみなさんが「スマートフォンで映像を撮影してクラウドで共有する」のも技術的に難しそうとも思いました。なにか映像を集める良い方法はないだろうか。
そんなときにふとGoproMAXという360度撮影できるカメラのことを気づきました。いわゆるVR映像が手軽に制作できるカメラとして360度撮影できるカメラが話題になり、Insta360やリコーのTHETA 360など、いろいろなカメラもリリースされました。360度撮影しているだけあって、カメラの水平維持の機能もすぐれていて、Goproについては5mまでの防水機能もあるため農家の方が撮影するにも、汚れたら水洗いもできるし、水平の心配もしなくても良さそうです。そんなことを魚住さんに話しをして、さっそくカメラを数台入手して、宅急便で送ることにしました。
実はGoproMAXの前にも撮影をいくつかしていたのですが、この際、この制限された状況で撮影された映像だけで作品にしたほうが良いと思い、以外の映像はお蔵入りにしました。いつか光をあてるときがあるといいなと思いますが。
編集はもちろん一筋縄にはいかず、なにせ360度撮影できているので、送り戻されてきた映像をバックアップしてから、全方位をチェックすることになります。その後、通常の編集ができるための変換作業を経て編集に持ち込みます。水平は編集時に保つことができても手ぶれもあるし、何より悩まされたのは田畑に吹く風がカメラのマイク部分にぶつかって生じるノイズが激しく、せっかくの話しがノイズによって潰れてしまっていることも多々。対話をしていないので、モノローグか、あるいは他の誰かとのインタビューによって映像が撮られているので、内容の整理も至難を極めました。
取材先は北海道から熊本まで、長く有機農業に携わっている人たちで日本中はもとより世界的にも注目されている人も多く、その取り組みは感服するものばかりです。当初はそれぞれの話しを織り交ぜて映画をつくろうと考えましたが、できるだけ素直にそれぞれの様子を並べてほしいという魚住さんの要望からオムニバス形式に変更しました。オムニバスにした結果、長い映画となってしまい、一旦の完成はしたものの今後もうすこし短いバージョンにする必要性に迫られています。
今回の映画では農家のみなさんはじめ、取材先のみなさまの協力なくしては成立しませんでした。また事務局として調整にあたってくださった若島さん、吉川さんのお二人のご尽力も大きく、映画のエンドクレジットにお名前を入れるべきではないかと思っています。
わたしの編集に強力なパワーをあたえてくれたのはグラフィックデザインを担当してくれた山崎正樹さんと音楽の永田壮一郎さんです。編集の大詰めの状況でどんどんアイディアを出してくれて、リクエストにすぐ応じてイメージの10倍くらいいい感じで仕上げてくれました。今回の作品でわたしの主張・意見のようなものはできるだけ排除しましたが、この作品を通してわたしが考えていることの大半を伝え、わたし自身が言葉にしない部分を音楽で表現してくれたのは永田さんで、タイトルデザインを通して一見して伝わるようにしてくれたのが山崎さんでした。
この作品が今後どのように展開していくかは、じつはこの記事を書いている時点では未定です。ただオムニバスなので、パーツを切り分けてそれぞれの取材先や地域で独自の上映会などが展開できてもいいかなと思います。もちろん有機農業に関心のある方々にも広く観ていただける作品にもなれば幸いです。そのためには半分くらいまで短くしないとならないかもしれません。