「農業や漁業など一次産業の体験をしよう」とここ数年あちこちで言われるようになったと思う。子どもたちだけのことじゃなく、体験したい大人も増えているし、体験を積極的に受け入れるところも、その情報もSNSとともに増えているように思う。
一次産業の場所にいって体験して食べるのは、おいしい。その瞬間にしか味わえないものがあるし、海や山や畑の空気を感じる体験もまたすばらしい。個人的にはここに「栽培している段階ですでにわくわくする」(時としてがっくりする)を加えたい。種を播いて、芽が出たものを見る楽しさや、それが順調に大きくなっていく様子を眺めるのは、結構それだけで楽しい。
もちろん天候やその他さまざまなトラブルにみまわれて駄目になってしまうこともあるから、良い面ばかりを考えてはならないけれど、とはいえ、こういう食べてもいないうちから美味しいテンションがあがっていく感じは、さすがに買い物ではなかなか味わえない。
2021年10月19日に千葉県富津の海苔漁師 鈴藤丸の鈴木さんの海苔の育苗を見せてもらってきた。海苔の育苗が、いかに重要かについては東松島の海苔漁師 相澤太さんから度々聞いていたものの、実際に一緒に海に出てみてきたわけじゃない。今回はタイミングがよく海苔網まで行って撮影をしながら話しが聞けた。
いやー、そこに食べられる海苔はないけど、すでに何だかおいしい気分になってくる。今回の映像タイトルにも入れたけど、海の養殖のことをAQUACULTURE(アクアカルチャー)という。魚釣りとも網を打って魚を捕るのとも違う、海でやる農業みたいな感じがある。
で農業もそうだけど、海苔養殖も自然環境に開かれていて、天候や風土に左右される一方で、自然を上手に活かしながらベストに仕上げていくための工夫がすごい。車やバイクを速く走らせる工夫とか、飛行機やロケットを飛ばすエンジニアリングにも通じる面白さがある。鈴木さんと話しをしていると、そういう工夫にワクワクさせられる何かがある。「一次産業の体験をしよう」って、こういう風土と向き合いながら創意工夫を凝らすロマンを知ることかもしれない。
今年の富津の海苔は、もうすでに美味しい。。。ってケンシロウみたいだな。