コンテンツへ移動

妙義山麓に咲き、実る ― 群馬県安中「木の花園」梅園訪問記

観光農園ではない、”本気の梅づくり”の現場へ

群馬県安中市、妙義山の裾野。すぐそばを碓氷川が流れるこの土地に、「木の花園」はあります。訪れて驚いたのは、ここが観光客向けの梅園ではないということ。摘み取り体験も出店もない、ただひたすらに梅の実と向き合う果樹園です。

碓氷川が長い年月をかけて削り出した広い河原に、園地は約6000坪。植えられている梅の木は250本。かつては水田だったというこの場所を梅園へと切り替えたのは、先々代だといいます。その決断が、今この景色をつくっています。

今回、わたしはこの梅園に二度、季節を変えて足を運びました。3月の満開と、6月の収穫。同じ木々が、まったく違う表情を見せてくれました。

三月、白加賀が香る頃

最初の訪問は3月。ちょうど「白加賀」という品種が満開を迎えていました。青いまま梅酒に使われることの多い、4cmクラスの大粒品種です。まだ肌寒さの残る梅園には、気品ある香りが静かに漂っていました。梅干しに使われる南高梅はすでに開花のピークを過ぎていましたが、その姿は映像にもわずかに残っています。

梅はバラ科の植物で、花のついた枝がまっすぐ天へと伸びていくのが特徴です。その枝と枝の間を縫うように、ドローンで飛びながら撮影しました。

狩野派の絵画が、頭の中でよみがえった

小学生の頃に観た狩野派の絵画。節くれ立った力強い枝ぶりと、かすれた墨で描いたような樹肌の皺――その質感がずっと記憶に残っていて、梅や桜を見るときのフィルターのようになっていました。

撮影の最中、まさにその樹形と樹肌の質感を、無意識のうちに追い求めている自分に気づきました。切り立った岩肌が印象的な妙義山と、その麓に広がる梅の木々。ふたつが重なり合ってつくり出す景色は、わたしの頭の中にある狩野派の絵画そのものでした。

水田をこの梅園に変えた先々代が同じ景色を思い描いていたのかどうかはわかりません。それでも、時代を超えて同じ風景を見ているような、不思議な感覚がありました。

六月、青々とした梅のトンネルの中で

二度目の訪問は6月、梅の実の収穫期です。花のシーズンとは一変し、葉が青々と生い茂る梅園は、地面まで草の絨毯に覆われ、枝を大きく広げた木々の姿は一層力強く見えました。

ここでの収穫は、すべて手摘みです。

腰にサコッシュのようなバッグを下げ、三脚状の脚立にのぼり、梅の実をひとつひとつ丁寧に摘んでいきます。

「梅の実の傷や色あいなど、状態をみながら収穫できます。でも翌日は腕が上がらなくなるほど、身体には負担がかかりますよ」 ―― 農園の澤田さん

3月に見たあの花の一つひとつが、実になっている。そう考えると、その途方もない手数に頭が下がります。腰のバッグがいっぱいになるとコンテナへ移し、また三脚にのぼる。それをひたすら繰り返し、トラックが満載になったところで収穫は終了。次は選果作業へと移っていきます。

両手を力強く広げるように葉を茂らせた梅林は、どこから撮っても絵になる美しさでした。木々の間をぐるぐると飛び回りながら、その姿を余すことなくクリップに収めていきました。